【古事記】で語られる神|イザナミの病と黄泉の国からの帰還

『蔵』:曼荼羅と神の系譜

『水は方円の器に従う。[癸水]です。』

前回、私たちは伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)が築き上げた、最初で最後の「家族」の姿を追いました。 しかし、その団欒は「火」の誕生とともに、あまりにも残酷な終焉を迎えます。

愛する妻を焼き殺した火、崩れゆく体、そして逃げ帰った死者の国。 ここから語られるのは、もはや温もりを伴う「産まれる」物語ではありません。

執着を捨て、汚れを削ぎ落とし、最後に残った自らの本質をさらけ出す。 肉体の交わりを介さず、伊邪那岐の苦悶と純化のプロセスから顕れた存在。

それは、愛の結晶としての子として生まれるのではなく、事象としての法則が「出でる」神となります。

家族という幻想を失った男が、独りで「世界の秩序」を顕現させていく、その冷徹かつ崇高なリアリズムを紐解いていきましょう。

イザナミの病床より出ずる、資源の神々

神名:金山毘古神(カナヤマビコノカミ)
神名:金山毘売神(カナヤマビメノカミ)
誕生:伊邪那美の嘔吐物より出でた、鉱山の神

神名:波邇夜須毘古神(ハニヤスビコノカミ)
神名:波邇夜須毘売神(ハニヤスビメノカミ)
誕生:伊邪那美の糞より出でた、土・粘土の神

神名:弥都波能売神(ミツハノメノカミ)
誕生:伊邪那美の尿より出でた、水の神

神名:和久産巣日神(ワクムスビノカミ)
誕生:伊邪那美の尿より出でた、成長・豊穣の神

この六柱は、病床に伏せる伊邪那美から出るものより、誕生している。
この後、伊邪那美は亡くなってしまい、伊邪那岐がカグツチを斬り殺してしまいます。

カグツチを斬りその剣についた血より出し神々

1.剣の先についた血が岩に飛び散って生まれた神

神名:石拆神(イワサク)
岩を切り裂く威力の神
神名:根拆神(ネサク)
岩の根元まで切り裂く神
神名:石筒之男神(イワツツノオ)
岩のように堅固な剣の神

2.剣の根本についた血が岩に飛び散って生まれた神

神名:甕速日神(ミカハヤヒ)
雷のような鋭い威力の神。
神名:樋速日神(ヒハヤヒ)
火のような速い威力の神。
神名:建御雷之男神(タケミカヅチ)
雷神であり武神。後に国譲りで活躍します。
追記:主祭神として有名な神社が、茨城県『鹿島神宮』

3.剣の柄(手で握る部分)に溜まった血が指の間から漏れて生まれた神

神名:闇淤加美神(クラオカミ)
谷底を司る水の神。
神名:闇御津羽神(クラミツハ)
谷底を流れる水の神。

亡くなった、伊邪那美の遺体より出でた神

遺体からは山の神が8柱、生まれます。

神名:正鹿山津見神(マサカヤマツミ)
誕生:遺体の頭より。 切り立った急峻な山頂や頂上付近を司る神。

神名:善鹿山津見神(ヨシカヤマツミ)
誕生:遺体の胸より。 山の中腹や、緑豊かな斜面の神。

神名:奥山津見神(オクヤマツミ)
誕生:遺体の腹から。人里離れた「奥山」、深山(みやま)を司る神。

神名:闇山津見神(クラヤマツミ)
誕生:遺体の性器から。山の中の暗い谷間や、湿った場所を司る神。

神名:志藝山津見神(シギヤマツミ)
誕生:左手から。山の尾根や、突き出た岩場を司る神。

神名:羽山津見神(ハヤマツミ)
誕生:遺体の右手から。山と平地の境界、つまり「端山(はやま)」や里山を司る神。

神名:原山津見神(ハラヤマツミ)
誕生:遺体の左足から。「原っぱ」や、なだらかな裾野を司る神。

神名:戸山津見神(トヤマツミ)
誕生:遺体の右足から。「登山口」や、山への入り口を司る神。 

黄泉の国。変わり果てた伊邪那美に宿っていた神。

八柱の雷神(ヤクサノイカヅチ)

神名:大雷(オオイカヅチ)
頭に宿る。
神名:火雷(ホノイカヅチ)
胸に宿る。
神名:黒雷(クロイカヅチ)
腹に宿る。
神名:拆雷(サクイカヅチ)
性器に宿る。
神名:若雷(ワカイカヅチ)
左手に宿る。
神名:土雷(ツチイカヅチ)
右手に宿る。
神名:鳴雷(ナルイカヅチ)
左足に宿る。
神名:伏雷(フシイカヅチ)
右足に宿る。

伊邪那岐の帰還。黄泉の国との境界

神名:道敷大神(チシキノオオカミ)
記:逃げるイザナギが、黄泉の国の出口(黄泉比良坂)で追っ手を振り切るために置いた「千引の石(ちびきのいわ)」そのもの

「母の病床から漏れ出した資源、父の剣から飛び散った武力、そして遺体から成した山々と、死に宿った雷。
ここに並ぶ神々に、もはや親子の情愛は存在しない。
描かれているのは、一個の生命が解体され、この世界の物理的な『理(ことわり)』へと還元されていく、一切の妥協がないリアリズムである。
忘れてはいけないのが、これは物語であって事実ではない。数々点在する神と信仰をまとめ上げた資料である。
紹介の順番は、古事記(物語)で出てくる順番通りに記載しています。
家族などの繋がりはなく。伊邪那美の血肉より自然がなされていく状況が物語として描かれています。

調和より普遍を…『癸水』kisuiでした。

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